日本映画発掘記録

配信で見れる”あの頃日本映画”を掘り起こしています。

華やかとは言い難いけど...|『銀座カンカン娘』|A面

楽しい1時間を過ごしたいなら、これです。

 

 

あらすじ

声楽家と画家を目指す若い女性の居候二人組。一文無しのため職探しに出かけると、映画のロケ隊に出会い、そこから話は進んで・・・。

 

発掘結果(1)日本映画のミュージカル!

日本映画にミュージカルは似合わない。そもそもオペレッタを引き継ぐミュージカルは、その発祥から西洋的なものだった。

なんてお思いの皆さん、意外とそうでもないのです。

この発掘記録にも仲間入りさせたい、いくつかの名作国産ミュージカルが世にはあるのです。

例えば1939年公開の『鴛鴦歌合戦』、1964年公開の『ああ爆弾』がいいところです。どちらも個性を持ちながら、大傑作となっています。

 

この作品『銀座カンカン娘』は、日本映画のミュージカルとしては有名なところでしょうか。主題歌(服部良一作曲)も有名ですね。

観てびっくりしました、あまりにもミュージカル的だったということに!

 

そもそもミュージカルというのは定義が難しく、バックステージ系は突然歌い出すなんてことはないのです。だけど、突然歌い出すことこそ、ミュージカルの醍醐味!(じゃありません?)この作品にはそんな醍醐味もあれば、高峰秀子さんと笠置シズ子のパフォーマンスを堪能することもできます。最高です。

 

加えて、これはネタバレになるので大声では言えませんが、ミュージカルの定義を揺るがすエンディングに大感動です!!注目!

 

発掘結果(2)笠置シズ子さん!

これに尽きます。もちろん主演は高峰秀子さんなのですが、笠置シズ子さんの存在感が半端ありません。

「東京ブギウギ」などの大ヒット曲を持つ彼女ですが、話す姿、演技する姿は初めて観ました。

細い体でしゃがれた声でコテコテの大阪弁を話す彼女が、ステージの上では伸びやかに歌い踊る姿に、とても新鮮な驚きを覚えます。

笠置シズ子さんは特に大きな演技もせず、出番も少ないですが、彼女の存在感は、主演を覆い隠してしまうほどのものを感じました。

ちなみに、流しのトランペット吹を演じた喜劇役者の岸井明さんも、コミカルでとてもいい感じ。三人揃った時、『お熱いのがお好き』を思い出しました。三人組はいつの時代もピタッとハマりますね。

そしてそして、落語には疎い私、あまり何もかけませんが、古今亭志ん生 (5代目)さんがお父さん役で出演、”落語家・桜亭新笑役で出演し、短縮版だが「替り目」を7分近く演じている(また、一人で「疝気の虫」を稽古しているシーンもある)”(wikiより)とのことです。

 

発掘結果(3)1時間に凝縮される戦後の日本

この作品は1949年の公開です。

この時代の作品の中でも、とびきり華やかな作品に思えるかもしれません。なんせ、タイトルに銀座なんてついているし...

と思っていましたが、実は全然違いました。

華やかとは言い難いのです。この作品。最も、物語設定から戦後の日本が凝縮されているのです。

高峰秀子さんは戦争孤児という設定になっています。笠置シヅ子さんはよくわかりませんが、職もなく住むところもないという有様です。加えて、彼女たちが身を寄せる一家は不況で食に困ったり、立退を宣告されたりします。

また、彼女たちが住むのは銀座ではなく、緑豊かな郊外なのです。銀座というタイトルからは想像がつかないほど、華やかとは言い難い物語なのです。

そこがこの作品のポイント、戦後すぐの日本の一つの断片を、私は観た気がします。都心でバラック暮らし(黒澤の『酔いどれ天使』など)上流階級で豪邸住まい(小津作品)など40年代後半の作品は様々な状況が映し出されています。この作品はその中でも、また異なる存在感を発揮しますね。予想外でした!

 

発掘結果 まとめの一言

ただのミュージカル映画じゃない、濃密な1時間!でも楽しい!

 

作品情報・配信情報

『銀座カンカン娘』

1949年 製作 島耕二 監督

 

Netflixで配信中

 

本編を見た後は

分析エッセイ(B面)もどうぞ!

angie-stars.hatenablog.com